地域の取り組み

宮古島「島を守る」という強いメッセージ

島と観光に必要な
「サスティナブルツーリズムガイドライン」

島と観光に必要な「サスティナブルツーリズムガイドライン」

宮古島市は2015年からの5年間で観光客が倍増し、島に多くの恩恵をもたらしましたが、同時にオーバーツーリズムによる課題も顕在化しました。観光客の増加は、地元住民の生活への負担、レンタカーによる事故の増加、住宅やホテル建設に伴う建設費や家賃の高騰など、さまざまな問題を生み出しています。
さらに島外からの投資が活発化する中で、観光収入の大部分が島外に流出してしまい十分に宮古島へ還元されていない問題も起きました。

2020年に入り新型コロナウイルス感染症の拡大は、観光業に大きな打撃を与え、島の経済にさらなる影響を及ぼしましたが、収束後に再び同様の問題が発生しないように対策していく必要があります。


島と観光に必要な「サスティナブルツーリズムガイドライン」

オーバーツーリズムへの共存策

宮古島観光協会は同年に、観光戦略委員会を立ち上げ、観光協会の中長期ビジョンの策定と観光地域づくり法人(DMO)の設立に向けた重要な取り組みを進める役割を担いました。
この委員会では、観光協会の内外から様々な業種の専門家を集め、宮古島らしさとは何か、そして将来的に目指すべき観光のあり方について深く議論しました。
島の魅力をさらに高めるため、観光客向けのガイドラインを整備し、質の高い観光体験を提供することに重点を置いた環境保護の取り組みを進めました。

その後2022年には、これらの議論と取り組みを具体化するため、「宮古島サスティナブルツーリズム連絡会」を発足しガイドラインの策定に取り組みます。連絡会事務局は、観光協会戦略委員会、自然環境(SNAP)分科会、マリン事業者のマリン部会から構成され、多様な視点からサスティナブルツーリズムの実現に向け進められました。

翌年には「宮古島サスティナブルツーリズムガイドライン」が発表され、「島を守る」というテーマでポスターや冊子、WEBサイトなど媒体を通して周知されました。2024年3月からは、ガイドラインに基づいた認証制度が開始され、宮古島における観光の新しい姿への重要な一歩となっています。

宮古島観光協会は、美しい自然と文化を次世代に継承するために、適切な運営と環境への配慮を行う事業者の支援に力を入れています。将来的には法的枠組みの導入も視野に入れ、高い目標に向けて多様な関係者との意見交換を進めていく必要があると考えています。
宮古島の魅力を守り育むために旅行者・市民・事業者が手を取り合い、尊重しながら持続可能な観光の実現を目指しています。

オーバーツーリズムへの共存策 観光客向けガイドライン「宮古の約束」 ポスター「ガイドラインアイコン」
地元の人が本当に伝えたい宮古島の魅力

地元の人が本当に伝えたい宮古島の魅力

新たな試みとして、観光庁の「サステナブルな観光に資する好循環の仕組み作りモデル事業」にて、今までにない宮古島の観光コンテンツの開発に着手しました。このプロジェクトでは、地域が直面する課題へ対応しつつ、海の魅力だけでなく、自然環境やユニークな文化や歴史を組み合わせた、宮古島らしさを感じられる体験を提供することを目指しました。
具体的には、自然環境や宮古馬、伝統的な宮古上布、地元の伝統芸能、そして情報発信といったテーマに焦点を当て、質の高いコンテンツ作りに取り組みました。
始めの年は、地域の関係者のみなさんと、どのようにこれらの地域資源を活かしていくか、未来のあり方について意見を交わし合う期間となりました。続く翌年からは、その内容をさらに磨き上げ、実際にモニターツアーを実施し少しずつ形にしていきました。

また、伝統的なクイチャーを現代風にアレンジし、バイオリンとエイサーと融合させた新しい楽曲でより多くの方に知ってもらえるような試みも行われています。宮古島の文化を守りながらも、新しい視点で地元の伝統を伝え、訪れる方々に新たな宮古島の魅力を紹介しています。

地元の人が本当に伝えたい宮古島の魅力1 地元の人が本当に伝えたい宮古島の魅力2 地元の人が本当に伝えたい宮古島の魅力3 地元の人が本当に伝えたい宮古島の魅力4
この島の美しさは私たち次第だ

対話から生まれた新しい価値

今回のプロジェクトは、初めからイメージは持っていましたが、地域の関係者との間で理想と現実の調和を図る必要がありました。訪れる方の期待に応えつつも、地域の実態やペースを尊重することが求められ、このバランスを見つけるために関係者の皆さんとの対話を何度も重ねました。この対話を通して、互いの理解を深めることができ、地域の繊細な魅力にこだわりながら地域資源を活かした観光コンテンツの構築が出来ていると感じています。

現在、観光協会ではモニターツアーを実施し、一部の体験については販売を開始しています。多くの関心をいただいておりますが、提供する体験の特殊性を考慮し、持続可能な形で慎重に販売を進めています。
訪れる方々にとって、宮古島の深い魅力を体験していただき、学びのある特別な時間を過ごしてもらうことを目指しています。

宮古島の魅力を地域の視点で理解し、訪れる人々にその素晴らしさを伝えることが、私たちが目指す理想の持続可能な循環の形です。
私たちは、環境への配慮を忘れず、「島を守る」というメッセージを込めたリアルな宮古島をPRしています。綺麗な星空の下には海岸にある大量の漂着ゴミを描いたポスターや、誘客だけが目的ではない映像を通して、島に実際に存在する価値あるものへの思いやりを訴えかけています。
また、キャッチコピーに至るまで、自分たちで考え抜いた言葉を使い、訪れる人々に宮古島の等身大の姿を感じ取ってもらいたいと願っています。観光協会として、これらの取り組みが宮古島の魅力を内外に伝え、より多くの人に実際の島の価値を再認識してもらうことを願っています。

真の観光を考える
サスティナブルツーリズム

宮古島の明るい未来を描くためには、若い世代が中心となって島の可能性について考え、理想を形にしていくことが重要です。私たちには、宮古島の特色を自分たちの視点から再発見し、豊かな自然と文化を次世代へと繋げる役割があります。

島の魅力を深く理解し、自信を持って伝えることができれば、訪れる人々にも宮古島の本当の価値を感じてもらえると信じています。このようにして、宮古島の美しさをより多くの人々と分かち合いたいと願っています。

「地域が豊かでなければ、それは真の観光ではない」という気持ちを大切にし、島で事業を行う皆さんも環境への配慮や島へのリスペクトを忘れずに活動をして欲しいです。

地域全体が一丸となって、宮古島の未来に責任を持ち、島を守り育てていくことが大切です。それが持続可能な観光へ繋がり、地域の人々だけでなく、訪れる人々にも宮古島の魅力を感じてもらいたいと考えています。

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■宮古島 取材者

一般社団法人 宮古島観光協会 専務理事 平山 茂治 一般社団法人 宮古島観光協会 専務理事 平山 茂治 ひらやま しげじ
一般社団法人 宮古島観光協会 理事 一般社団法人 YUU 代表理事 大泊 千尋 一般社団法人 宮古島観光協会 理事
一般社団法人 YUU 代表理事
大泊 千尋 おおどまり ちひろ

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