20年の歳月が育んだビオトープ

20年の歳月が育んだビオトープ

特定非営利活動法人久米島ホタルの会

ホタルを養殖するのではなく ホタルが生息できる環境再生

未来を見据えた再生プラン

久米島だけに生息する沖縄県天然記念物のクメジマボタルを保全する久米島ホタル館。2000年の開館当初から館長を務めている佐藤文保さん・直美さん夫妻は、敷地内を流れる浦地川一帯にホタルが自生する環境を再生させました。開館当初、運営者である久米島町役場は、綺麗に剪定された木々と明るく安全に遊べる広場がある公園でホタルの鑑賞を楽しんでもらうという施設を求めていましたが、そのためには、上流の畑から流れてくる赤土対策を行い、天然の川を活かしてホタルの生態系を再生するべきだという佐藤さんの考えはなかなか理解されず、役場や島の人たちに受けいれてもらうのに相当な時間がかかったといいます。

ホタル観賞という枠を超えて 自然体験や学びを重視

目指すのは持続可能な自然環境

逆境から始まった佐藤さん夫妻のビオトープ作り。当時の浦地川は赤土と土に含まれる農薬などの影響で、生物の棲みにくい状況になっていました。ビオトープとは、野生生物が生息できる生態系を持つ自然空間のこと。生態系を再現するために赤土を取り除き、木々を植え、池や湿地帯も作りました。「一部の人からは『勝手なことをしている』などと言われ辛い日々もあった」と直美さん。「でも、私たちが見ていたのは島の未来。この場所にコンパクトな生態系を人工的につくれば環境は再生できるという実例になり、環境に対する意識が高まり島の自然保護に繋がると考えていました。『ホタル綺麗だね』と観賞するだけではなく、生態系を見て触れて体験できる施設づくりを目標にしてきました」

20年以上続けてこれたのは島の子どもたちのおかげ!

みんなの活動が紡がれ、今の環境がある

現在のビオトープは、協力してくれた島の方々やスタッフ達、そして、観光や体験に訪れてくれたお客様や島の子ども達と一緒に作ってきたもの。久米島ホタル館では毎年、小中学生を対象とした「久米島ホタレンジャー」と、高校生を対象とした「インターンシップ」を募集し、1年を通して一緒に活動をしています。「ホタレンジャーには環境保護活動をあまり意識させず、川遊びや海遊びをしながら赤土泥の汲み上げやゴミ拾いをしています。将来、ここでの遊びは実は環境保護活動だったと気づいてもらえたらいいなと思っています。インターンシップ生にはしっかり学んでもらい、一緒に人工の川を作ったり木を植えたりしています。ホタレンジャーやインターンシップ生、彼らがやってきた作業一つ一つが紡がれて、20年でここまでの生態系をつくることができたんです。これまで、関わってくれた皆さんに、心から感謝しています」
SDGsが浸透し、自然を楽しむだけでなく学びたいという観光客が増えたことで、ビオトープづくりや環境保護活動は役場にも島の住民にも理解され、以前より活動しやすくなったそう。佐藤さん夫妻は、「久米島は県立自然公園に指定されていますが、私たちは国立公園にすることを目指しています。この島には、十分にその価値があると思います」と、次の目標に向けてさらに意欲的です。

COLUMN

天然記念物のクメジマボタル

久米島だけに生息するゲンジボタルの仲間で、沖縄県の天然記念物に指定されています。胸は橙色、体長は雄14~16mm、雌16~18mmと大きめ、明滅間隔は2.5~4秒と一定ではなく「アバウト型」。テーゲー型(沖縄の方言で「だいたい、適当」の意味)とも言われています。久米島ホタル館ではクメジマボタルの健全な生態系を再生・保全し、4月中旬~5月上旬には成虫が飛び交う幻想的な光景が見られます。

PRODUCTS – 01

川の上流探険& 不法投棄ゴミの回収

SDGs14・15リバーウォーク

ガイドの指導と解説のもと、クメジマボタルの生息を復活させたホタル館の上流域の川を探険するプログラム。水域生態系や人と自然の関わり方を学びながら河川を歩きます。普段入ることのない起伏に富んだ川を移動し、さまざまな生き物との出会いが楽しめます。途中、環境に負荷をかけている不法投棄ゴミを回収したり川底に溜まった赤土の泥上げをしたり、川の再生に繋がる作業を行い、SDGs14・15の目標を達成するための理解を深めます。

集合時間
9:30
所要時間
約120分
開催期間
通年開催、1回1組限定
※1組=家族・団体・友人
料金
高校生以上/7,000円
小・中学生/3,500円
※推奨年齢、小学校1年生以上
※子どもだけの参加は、1人/1,000円追加

PRODUCTS – 02

赤土の泥上げ作業に味わう 環境に配慮したエシカルランチ

ホタルの守り人プログラム

川に溜まった赤土の泥をすくい上げる作業と、美味しいご褒美ランチがセットになったプラン。なぜ赤土が川を汚染するのか、陸と川と海の関係性や手作業で行う意味、赤土の再利用方法などを学びながら環境保全に繋がる作業を体験します。そして、体を動かした後はお楽しみのランチタイム。「手作りピザ体験」はピザ生地を伸ばして好きな具材を自分でトッピング。川から上げた赤土で造ったアースオーブンで焼き上げます。「脱プラスチック弁当」は、久米島で養殖されたクルマエビや季節の野菜たっぷりのおかずを葉っぱで包んだお弁当。全て手で食べられるように工夫されているので、余計なゴミが出ません。環境保全の作業から自然を生かしたランチタイムまで、SDGsへの気づきが散りばめられています。

集合時間
9:30
所要時間
約180分
開催期間
通年開催、1回1組限定
※1組=家族・団体・友人
料金
高校生以上/12,500円
小・中学生/6,500円

INFORMATION

久米島ホタル館

住所
〒901-3123 沖縄県島尻郡久米島町字大田420
電話
098-896-7100
開館時間
9:30〜17:00
休館日
月・火
H P
https://kumejimahotaru.jimdofree.com/